夕方の6時30分、人それぞれこの時間の過し方はちがうだろう。
私にとっては夕食の支度の忙しい時間。
そのあわただしい最中携帯が鳴った。
みれば私の両親の番号。
濡れた手を拭い携帯に手を伸ばすが切れてしまった。
私の両親は高齢だ、いつもなら絶対にかかってこない時間の電話はドキっとする。
直ぐに折り返し電話すると、
父が出て「誰だ?」
「誰だ、じゃないわよ、お父さんの次女よ、さっき電話くれたでしょ。」
「あはは、お前の処にかかってしまったか、携帯電話を新しくしたからかけ方の練習をしてたんだよ。」
「・・・・・・・!」
「また、かけるぞ」と電話は切れた。
今年81歳と85歳、我が両親ながら私はこの二人尊敬している。
しがないサラリーマン、3人の娘を一応大学まで卒業させ、そしてこの歳になっても誰の世話にならず二人で楽しく生活している。
ふぁんぐはこの二人を「スーパーじいさん」「スーパーばあさん」と呼ぶ。
スーパーばあさんはこの歳にしていまだに毎日化粧をし、クローゼットを流行の服で埋めている。
料理に関しては損所そこいらの主婦も真っ青、スーパー出来合いのおかずは一切つかわない。三度三度の食事は栄養バランスを考え、洋風から中華まで実に美味しくつくる。
スーパーじいさん・・・・この人がスゴイ。
84歳にして現役ゴルファー、毎日午前中は1.5キロ離れた練習場に通い、午後は午後でこれまた趣味の墨絵に没頭している。
昨年の夏も娘婿二人を引き連れ軽井沢で3日間連続コースを回ってのけた。
そして、「くそ!おばさんに飛距離で負けた!悔しいな。」と一人愚痴っていたかと思えば最近は2キロの鉄アレーで腕の筋肉を鍛えている。
墨絵の方もたいしたもの、引退してから始めたのだが最近は全国レベルの作品展で特選をとるまでになっている。
頭の回転もやや遅くなったもののまだまだ、なにせあの口達者なふぁんぐと互角にやりあうのだから大したもの。
「おじいちゃん、ズボンのチャック開いてる」
「ふん、お前はエッチだからな、気がつくかどうか試しに開けておいたんだ。やっぱり気がついたか。エッチなヤツだ」
「オイ、ふぁんぐ、お前剣道の進級どうした?」
「うん、○○受かったよ」
「ふん、○○か、まだまだだな。」
と聞いていて思わずふいてしまう会話がポンポンと続く。
両親を見ているとある程度歳をとれば自分の肉体年齢は自分で責任を持つものだということを感じる。
あの二人をお手本に私も最近物忘れが激しくなった頭を叱咤激励する毎日である。
そして、案の定携帯がまた鳴った。
「お~い、今月も狼曉連れてくるんだろう?」
「うん、行くわよ」
「待ってるぞ」

今年の干支、父作
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