我が家のふぁんぐにはへんな磁力がある。
例えば、野生の鳥(すずめとかカラス)にどれだけ近づけるか、その飛び立った瞬間とその人の距離を飛び立ち距離と言うのですけど、彼女の場合他の人よりも極端に短い。
他の人が5メートルくらいなら3メートルって具合。
人なれしている神社の境内の鳩なんて、彼女が何も持っていないのに彼女がその場に立つや否や頭や肩に止まって
「よう、ねぇちゃん、あそこ(売店)で餌買って来いよ」
と彼女曰く脅迫される。
人間にもちょっとニュアンスが違うけど同じような反応がみられる。
子供、兎に角子供に懐かれる。
そのふぁんぐ、大学に入ってこの1年、「塾」なる彼女が通いなれた所で講師のアルバイトを始めた。
なんせ、お金にせこいふぁんぐ、塾の講師は他のバイトと比べると段違いに時給がいい。それにつられて通い始めたのだけど、そこの塾で生徒達にバカうけ。
学校では先生をまったく寄せ付けない出来る組、出来ない組までへんな磁力でひきつけている。
当初乱暴な言葉使いと態度をその都度注意していたその教室の責任者はふぁんぐのこの妙な能力をいち早く気付き、いまでは彼女がいくら生徒を小突いても文句ひとつ言わず笑っているらしい。
当然、彼女に回ってくる生徒は一癖も二癖もある他のバイトの先生方が扱いきれなかったツワモノばかり・・・・・
バイト講師をなめきっている男の子、家庭の事情からちょっと道からずれ始めてる子、人の好き嫌いが激しく気に入らないと全く返事をしない子、等など・・・
その中の一人にものすごいのがいた。
数学は小学校の4年生並、国語は2年生、社会にいたってはチンプンカンプン、この御仁を高校に入れろとのお達し。
勿論学校の成績はオール1、5教科200点満点の県下統一テストで5点という素晴らしさ。
そもそも彼は学校のみならず塾にまで見放され、ふぁんぐの塾にたどり着くまで4~5校退塾になったそうだ。
ふぁんぐが担当したのは社会、(これは即成績上昇につながる)。
「万葉集」って知ってるか?
とふぁんぐ
「マンヨウシュ???お酒の種類???」
と彼、
「人類の祖先の北京原人は・・・」
ふぁんぐ
「え、人間の祖先って猿じゃないの???」
と彼、
これ、冗談じゃないんですよ、すべてがこの調子。
そもそも勉強なるものを真ともにしたことがない、集中力もない、自分が出来ないことを充分に自覚している彼は自分がバカにされていることをそれこそ本能的に感じ取って大人たちに背を向けていた。
ところが何を言っても動じないふぁんぐ。
彼がゲーム好きなのを利用してゲームの説明書を国語の教科書にしてしまったり、飽きた頃合とみれば
「疲れたろう、頑張ったな、ほら、飴でもなめろ」
とふぁんぐ流に見事彼をてなづけた。
結果的に彼は無事に高校に入れました。
その子のお母さんは涙を流して喜び、ふぁんぐに
「先生程この子を理解し、この子に合った教え方をして下さった人はいままでに一人もいませんでした。
本当にありがとうございました。先生に会えた事は私達親子にとって幸運としか言いようがありません。
どうかこれからも頑張ってうちの子のような子供達の味方であってください。」
と・・・・・
ふぁんぐに特別に送られたケーキの箱の下にはギフトカードが隠されていました。
私はわが子への賛辞にホロリとしたのに、
「お!、5000円、ヤッター!!」
と喜ぶふぁんぐをみていると、おもわず笑わずにはいられないのです。
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