ふぁんぐは悪戯もの、小さい時は片時も目を離せなかった。
あの子の悪戯は独創的で実に面白い。特にカチンと来た相手に対する報復と思われる悪戯はそのテクニック群を抜いている。
今朝も・・・・・・
いつも狼曉が遊んでいるフィールドは市営グランド、大きくて芝生が張られてとても気持ちがいい。
サッカー、野球は禁止、犬は必ずつないで散歩と大きな注意書きがある。
私は公衆道徳についてはふぁんぐが幼い時から特に注意をしてきた。規則を守れ、ゴミを捨てるな、公共の場で騒がない、ふざけない等々。
当然ふぁんぐも私もここで狼曉のリードを離した事はない、自由に走らせればそれは楽しいだろう、でも、飼い主と一対一で遊んでいる限りこちらが積極的に動けばロングリードを使えばさほど不自由は感じない。
このフィールドで週末になると現れる人がいる。
2頭のボーダーを連れてくるこの人。私はまだ会った事はないのだが、ふぁんぐはしょっちゅう会うようだ。
この2頭、実によく訓練されていて素晴らしいボーダーらしい。
狼曉と同じようにここには訓練できているのだが、2頭ともノーリード。この事がふぁんぐには我慢できないらしい。
彼女は1頭にフセをさせて待たせ、その間に別の1頭に訓練を入れているらしい。ちゃんと待っていられるのだから、ほんと偉いですよね。
ふぁんぐ曰く、「規則破りは嫌いだけど、あれだけ訓練されていればノーリードも理解できる。2頭でも1頭つないで待たせているのならまだ理解できる。山の中や入り込んだ川原ならいざ知らず、公のグラウンドでの2頭同時のノーリード、いざと言うとき2頭いっぺんに制御できる訳がない。待ての訓練は他でやればいい」と言うのがふぁんぐの言い分。
しかし、気に入らないまでもいつもなら反対側で大人しくふぁんぐも訓練を始めるのだが、先週このボーダーさん友人と二人で来て計5頭のボーダーをノーリードで訓練した事がふぁんぐのカンに偉くさわったらしい。
今日はいつもよりボーダー達に近づいて狼曉にひも付きボールに代えて訓練には通用しない通称「ライオン丸」と名づけた笛つきおもちゃを投げ与えた。
勿論狼曉はピーピーおもちゃは大好き、ピーピー鳴らしながらふぁんぐの周りを飛んだり跳ねたり楽しそうに走り回った。
この狼曉の派手なデモンストレーションに待たされていたボーダーの耳がぞわっと持ち上がりと同時にもぞもぞと動き出す。
彼女が飛んできてコマンドのかけなおし。
あおるふぁんぐに狼曉はますます調子に乗ってピーピー走り回る。
このピーピーの誘惑、ボーダー君、とっても我慢できない、狼曉の方にそろそろと移動を開始。
彼女、飛んできてまたコマンドのかけなおし、ところがそのあいだに訓練途中のもう1頭まで狼曉の誘惑に動き出す。
これは訓練にならないと判断したのだろう。
いつもならもっと長時間やっている訓練をそそくさと切り上げ、グラウンドから逃げ出した。
後に残るは勝利の踊りを踊る一人と一匹。
この歳にしてこの悪がきパワー、恐れ入りました。